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10/27(火)【保健委員会】第4回学校保健委員会「薬物乱用防止教室」

 10月27日(火)、第4回学校保健委員会「薬物乱用防止教室」を実施しました。

 埼玉県の公立学校では本教室の毎年実施が定められており、附属中学校でも多様な職種・立場の方をお招きし、多角的な視点から学ぶ機会を大切にしています。今回も保健委員の生徒たちが事前の企画・準備から当日の運営までを中心となって行いました。

 今年度は、草加市立病院 薬剤師 主査の伊藤剛貴様を講師にお迎えし、指導助言者として本校学校薬剤師の金子裕子様にもご参加いただきました。当日は参加を申し込まれた保護者の皆様にもご来校いただき、生徒とともに学びを深めました。

 

 今年度のテーマは、『「知っている」から「自分を守れる力」へ』です。 開会の言葉の際、保健委員からこのテーマが発表され、参加者全員で意識を共有した上で講演の拝聴や体験活動に取り組みました。

 

🍆講師紹介🍆

講師:草加市立病院 薬剤師 主査 伊藤剛貴 様

 明治薬科大学をご卒業後、複数の総合病院勤務を経て2016年より草加市立病院薬剤部に勤務され、2024年より主査を務められています。専門である「がん薬物療法」や「緩和医療」の分野において数多くの専門薬剤師・指導薬剤師の資格をお持ちであり、学会のガイドライン策定や専門書籍の執筆に携わられるなど、薬剤分野のスペシャリストとしてご活躍されています。

 

🍆講師による講演及び体験活動🍆

 従来語られてきた麻薬や大麻、危険ドラッグといった内容にとどまらず、近年大きな問題となっているオーバードーズやカフェイン中毒など、まさに現代の中学生にとっても「遠いようで非常に身近な」リスクについて詳しくお話しいただきました。

 

  • 身近に迫る危険:薬物乱用は決して自分に無関係な問題ではなく、若い世代にとって非常に身近な問題となっている。

  • 規制対象の薬物:覚醒剤、大麻、ヘロインやMDMAなどの麻薬は明確に法律で規制されている(※カフェインや医療用麻薬は一定のルールのもとで使用が認められている)。

  • 大麻の急増:日本ではかつて覚醒剤が中心であったが、近年大麻が急増し、現在最も検挙者が多い薬物となっている。

  • 若年層の割合:大麻による逮捕者の約75%(4人に3人)を10代・20代が占めており、10代だけで見ても全体の約2割を占めている。

  • 乱用のきっかけと理由:

    • きっかけ:友人・知人からの誘い、その場の雰囲気、SNSやインターネット。

    • 使用理由:圧倒的に「好奇心・興味本位」、ついで「ストレス発散」「現実逃避」。

  • 誤った情報の流布:逮捕者の約半数が「大麻は危険ではない」と考えていた。この誤情報は友人・知人(約50%)やSNS・ネット(約35%)を通じて広まっている。

  • 身体・脳への影響:薬物を使用すると脳が萎縮して正常な機能を失う。運動機能が低下し、綺麗な円が描けなくなるなどの影響が出る。

  • 影響の広がり:薬物の影響は本人だけにとどまらない。

    • 本人:判断力低下、依存症、健康被害。

    • 周囲:交通事故、金銭トラブル、家族・友人関係の破綻。

    • 社会:犯罪増加や社会不安の拡大。

  • 歴史と世界の現状:1840年の「アヘン戦争」のように歴史的にも大問題となってきた。現在でもアメリカでは「オピオイド危機(国家非常事態宣言)」により、薬物の過剰摂取で年間8万人以上(コロナ禍では12万〜13万人)が死亡しており、銃による死亡者数(約4万5,000人)を大幅に上回っている。

  • 大麻取締法の改正(2024年冬):

    • 従来の大麻取締法には「使用罪」がなく、所持のみが規制されていたことが「使っても大丈夫」という誤解を生む原因となっていた。

    • 2024年冬より、大麻は「麻薬」として位置づけられ、「使用罪」の新設および厳罰化がなされた。

  • 医療用麻薬の正体:病院ではモルヒネなどの麻薬が痛みの緩和や麻酔目的で厳重に保管・使用されている。正しく使えば医療の役に立つが、誤った使い方をすれば依存や中毒を起こす。「1回くらいなら安全」と言える薬物は存在しない。

 

  • 薬の本来の目的:病気の原因への作用、痛みの緩和、体調の調節が役割であり、健康な人の能力を無制限に高める魔法のようなものではない。

  • 薬と毒の関係(化学構造と用量):

    • 薬は化学構造が少し変わるだけで作用が激変する(片方は睡眠薬、もう片方は胎児毒性を持つ例など)。

    • 適切な量であれば効果を発揮するが、少なければ効かず、多すぎれば肝臓などの器官を破壊して毒となる。

    • 「薬(クスリ)」を逆から読むと「リスク」になる。

  • OD(オーバードーズ 過量服薬)問題:

    • 市販薬や処方薬を決められた量を超えて大量に飲む行為。本来の治療目的ではなく「辛い気持ちを変えたい」等の理由から行われる。

    • 2024年の調査では、中学生の約55人に1人(1クラスに約1人)が経験ありと回答している。

    • たった1回であっても急性中毒や命の危険につながり、繰り返せば依存症となる。

【カフェインが入っている飲み物を当てるクイズに答えている生徒の様子です。】

 

  • カフェイン・アルコール・タバコのリスク:

    • カフェイン:コーヒー、緑茶、コーラ、エナジードリンク等に含まれる。過剰摂取で動悸、イライラ、不眠、中毒死を引き起こす。成長期の子供は大人より影響を受けやすい。

    • カフェイン摂取目安:カナダの基準では体重1kgあたり2.5mg/日(40kgで100mg、50kgで145mg)。500mlのエナジードリンク1本には約200mg含まれており、1本で子供の1日目安量を超えてしまう。

    • タバコ・アルコール:20歳未満は法律で禁止されている。受動喫煙、急性アルコール中毒、飲酒運転、内臓障害など、身近であっても安全とは言えない。

 

【クスリを誘われた時の断り方のデモンストレーションを講師の伊藤先生と生徒指導部の先生に実演してもらいました。】

 

  • 短くはっきり断る:「やらない」「いらない」「興味がない」と伝える。余計な理由を言うと相手と説得合戦になり、根負けする原因となる。

  • 同じ言葉を繰り返す(ブレイキング・レコード):理由を提示せず、拒否の言葉だけを繰り返す。

  • 話題を変える:強制的に別の話題に切り替えて会話を逸らす。

  • その場から逃げる・離れる:「用事がある」「体調が悪い」「親から電話が来た」など理由をつけて離れる(理由が思いつかなければ無言で立ち去っても良い)。

  • SNSでの誘い:対面ではないためワンクッション置く。「すぐに返信しない」「立ち止まって考える」「ブロックする」「大人に相談する」を徹底する。

  • 極意:上手に断る必要はない。相手との関係性や相手の要求よりも、「自分の身を守ること」を最優先にする。

 

  • 薬に頼らない:薬物やオーバードーズに逃げても、辛さの根本的な原因(学校、勉強、人間関係など)は解決せず、健康・命の危険が増すだけである。

  • 誰かに一言伝える:完璧な文章や説明は不要。「ちょっと辛い」「最近しんどい」と一言打ち明けるだけで良い。

  • 話しやすい人につながる:家族、先生、養護教諭、スクールカウンセラー、信頼できる友人・先輩など、自分が一番話しやすい人に伝える。

  • 友達から相談された場合:一人で抱え込まず、相手の安全と命を守るために一緒に大人や先生へつなぐ。

 

🍆生徒感想🍆

1. エナジードリンクとカフェインの真実──「身近だから安全」ではない

 前回の定期テスト前、どうしても眠くてエナジードリンクに頼ってしまった経験があります。だからこそ、本来は缶半分の量で一日の上限になることや、1本で推奨量を簡単に超えてしまうというお話はとても衝撃的でした。「合法であっても安全とは限らない」という言葉が強く心に残っています。みんなが飲んでいるからと過信せず、包丁や火と同じように「使い方を間違えれば危険なものになる」ということを忘れずに、量や時間を考えて正しくつきあっていきたいです。

 

2. つらい気持ちに飲み込まれそうなとき──薬に頼らず誰かにつながる

 講演を通して「つらい気持ちを薬でなんとかしようとしない」ことの大切さを痛感しました。自分自身がつらくなったり重い気分になったりしてオーバードーズ(OD)に逃げそうになっても、変化が起きるのは悪いことばかりで、気分が改善することはありません。私自身、つらい気持ちに飲み込まれそうになったことがあるからこそ、このことを大切にしたいです。つらくなったときは自分一人で抱え込まず、友達や話しやすい人にちょっと明るく話してみるなど、誰かに「つながる」ことを意識していきます。

 

3. 「大切な先輩や友達」から誘われたら──自信をもって断る力

 今まで「大切な先輩や友達が誘ってきたら、断って傷つけてしまったらどうしよう」と考えてしまっていました。しかし、講師の伊藤先生の「その人が大切なことと、誘いを受けることは別」という言葉を聞いて、とても前向きになることができました。説得しようとせず「短く一言ではっきり断る」ことが自分も相手も守ることにつながると学べたので、今なら「興味ないな〜」ときっぱり断る自信があります。

 

4. 『知っているから自分を守れる力へ』──身近な危険と正しい知識

 今回の教室では『知っているから自分を守れる力へ』をテーマに、たくさんの自分を守る力を学ぶことができました。大麻などの違法薬物が意外と身近にあることや、麻薬が麻酔などのよい目的にも使われていること、そして普段使う市販薬にも危険性があることを知りました。親に任せきりにするのではなく「自分が飲む薬は安全か、量は適切か」を自分でしっかり判断し、自分自身や夢、未来、大切な人を守るための言動をしていきたいです。

 

5. 寸劇や実例で楽しく学んだ知識を、これからの学校生活へ

 伊藤先生のご講演は、先生方の寸劇や実例をもとにしていて、全体を通して楽しく集中して拝聴することができました。保健委員の皆さんが会をよくするために努力してくださったおかげで、自分自身の「My Life」を見直す素晴らしい機会になりました。来年入学してくる7期生の後輩たちにも、今回のように楽しみながらしっかり学べる学校保健委員会を届けていきたいです。貴重なご講演をありがとうございました!

 

🍆保護者感想🍆

1. 「怖さを知る教育」から「実践的な自分を守る力」へ

 私たちが子供の頃に受けた薬物乱用防止教室は、麻薬の怖さを強調した映像が中心で衝撃を受けた記憶があります。しかし、SNSが普及した現代では、怖さを知るだけでは身を守りきれません。「いつ身近に迫るか分からないからこそ、その時どう行動するか」を考える本講座は、まさに実践的でした。日常生活に沿ってわかりやすく教えてくださった薬剤師の先生のおかげで、学びをより深めることができました。

 

2. 「逃げる・断る」技術は、いじめや悪ノリなどあらゆる場面に通じる

 大麻や覚醒剤だけでなく、市販の風邪薬や頭痛薬、カフェインなども対象になり得るというお話を聞き、危険がより身近にあることを再認識しました。今回の講演で学んだ「断る・離れる(逃げる)」という行動は、薬物乱用にとどまらず、いじめや万引き、飲食店での悪ふざけなど、日常生活の様々なトラブルから自分や周りの大切な人を守るためにも非常に役立つと感じました。

 

3. 「未来の自分を守るため」──子供たちの健やかな成長を願って

 薬物、オーバードーズ(OD)、アルコールやカフェインについて、カテゴリごとに大切なポイントを分かりやすく説明していただき、大変満足のいく内容でした。「薬物乱用防止は未来の自分を守るため」という言葉がとても印象に残っています。時間の関係上、駆け足になってしまったのが惜しいくらいもっとお聞きしたかったですが、教えていただいたことを子供たちが忘れず、これからも健やかに成長してくれることを願っています。

 

4. 親と子が同時に学び、考えを共有できる貴重な機会

 薬物乱用防止について、単に「知っている」という段階を超えて「自分の身を守るためにどう行動すべきか」を親子で同時に学び、共有できる講演は大変貴重だと感じました。同じ時間・同じ内容を一緒に体験できたからこそ家庭内でも話題にしやすく、講演の目的達成において非常に有効な機会になったと感じています。

 

5. 普段使う薬やカフェインのリスクを知る大切さ

 風邪薬や頭痛薬といった身近な市販薬のリスク、そして日頃から口にするカフェインの適切な摂取量の目安など、大人の目から見ても非常に大事な知識を得ることができ大変参考になりました。「知っているから守れる力へ」というテーマの通り、正しい知識を持つことが自分自身を守る第一歩になると改めて実感しました。ご講演いただきありがとうございました。

 

🍆教職員感想🍆

1. 「知る」だけでなく、生きていくための実践的な力を

 今回の講演は、違法薬物のリスクだけでなく市販薬やカフェインといった身近な話題からお話いただき、生徒たちにとっても「自分事」として捉えやすい内容でした。 「大切な友達や先輩からの誘いを断る具体的な方法」や「つらい気持ちを一人で抱え込まず周囲につながる姿勢」など、生きる上での実践的なスキルを学べた点が特に印象的でした。保健委員を中心に事前準備から主体的に関わり、真剣な眼差しで講演に聞き入る生徒たちの姿をみて、この薬物乱用防止教室は大成功だと思いました。

 

2. 「自分を守れる力」を育み、共通の認識で守る

 『「知っている」から「自分を守れる力」へ』というテーマの通り、知識を得るだけでなく行動に移す力を育む貴重な機会となりました。現代の生徒を取り巻く環境は変化しており、正しい選択肢を選ぶ「判断力」と「断る勇気」がこれまで以上に求められています。 今回、保護者の皆様にもご参加いただき、家庭と学校が共通の認識を持って生徒の健康や安全について考える場を持てたことは大変意義深いと感じました。

 

🍆学校薬剤師指導講評🍆

指導講評:本校学校薬剤師 金子裕子様

 薬物乱用は、決して「自分一人だけの問題」では終わりません。家族をはじめとする大切な周囲の人々にも、大きな影響や苦しみを与えてしまいます。最近の報道でも、男子バレーボール日本代表選手やプロ野球選手による違法薬物使用の事例が報じられましたが、こうした事例からもわかるように、たった一度の過ちで周囲の人々を巻き込み、自分自身の積み重ねてきた大切な未来までも失ってしまうのです。

 皆さんには、何かあったときに「誰かに話をする(相談する)」こと、そして友達の異変や悩みに気づいたときに「話を聞いてあげる」ことが非常に大切であるということを決して忘れず、これからの学校生活を送っていってほしいと思います。

 

🍆終わりに🍆

 専門的な立場から大変貴重なご講演をいただきました講師の伊藤剛貴様、ならびに温かいご指導とご助言を賜りました学校薬剤師の金子裕子様に、心より深く感謝申し上げます。

 また、お忙しい中、本教室にご参加いただきました保護者の皆様、誠にありがとうございました。本校では今後も、生徒たちが安全で健やかな学校生活を送り、自らの未来を守る力を育めるよう、保健指導ならびに相談体制の充実に努めてまいります。ぜひご家庭におかれましても、本日の講演内容をきっかけにお子様と話し合う時間を持っていただければ幸いです。

 今後とも本校の学校保健教育活動へのご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。