10/17(金)【保健委員会】第4回学校保健委員会「心の健康教室」(1年生)
10月17日(金)、第3回学校保健委員会として「心の健康教室」を実施しました。今回の学校保健委員会も生徒保健委員が事前の企画・準備を行い、生徒の力で学校保健委員会を運営しました。
今回は今年度から本校に着任した スクールカウンセラー 岡田 松一 様をお招きし、「心の健康」 と「睡眠」をテーマとしてご講演いただきました。生徒の心と体の不調を防ぎ、安心して学校生活を送るために「心の健康教室」を1年生の2学期に実施しています。この学校保健委員会は学級活動の一環として行われ、中学校1年生の保健体育の「保健」で心の健康について学ぶ時期と連動させることで、教科を横断した学びの機会となるようにしています。
開会の言葉
学校保健委員会のテーマと開催目的を確認するために、以下のように保健委員が内容を考え、発表をしました。
「皆さんは、普段の生活で不安やストレスを感じることはありますか? 入学して、緊張しながら1学期を終え、2学期になって学校生活に慣れてきて緊張も取れてきたころだと思います。しかし、行事も立て続けにあり、忙しい毎日を送っていて、疲れやストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。ストレスがたまって心が疲れると、体調も崩しやすくなってしまいます。心と体に不調がなく、元気に生活できるように予防をすることが大切です。今回の学校保健委員会で、心の健康についての理解を深める機会にしましょう。」
講師紹介
事前に保健委員の生徒が講師にインタビューを行い、親しみやすいエピソードを交えながら紹介しました。保健委員からは「話しやすく相談しやすい存在」という声がありました。保健委員が講師紹介をしたことで、あたたかな雰囲気で会をスタートすることができました。
保健委員の発表
1学期末に実施した睡眠調査では、平日と休日の睡眠習慣や睡眠の質についての実態が明らかになりました。集計には埼玉大学大学院生の協力を得ており、その結果を保健委員の生徒が分析し、発表しました。
・平日の就寝時間は「22時から23時台」が最も多く、さらに「23時から0時台」までを合わせると全体の約8割にのぼりました。0時以降に眠る生徒も一定数見られました。休日は夜型に傾き、「23時から0時台」が最多で、平日には少なかった0時以降の就寝者が増加しています。
・平日の起床時間は「6時から7時台」が中心で、通学時間に合わせた規則的な生活が多く見られました。しかし休日は「7時から9時台」に起床する生徒が約7割を占め、平日との間に1〜3時間の睡眠リズムのずれが生じているようです。これはいわゆる「社会的時差ぼけ」と呼ばれる状態で、体調不良や日中の集中力低下につながる可能性が心配です。
・睡眠の質については、「寝つきにくさ」を感じる生徒が全体の約4割にのぼりました。また、過去1か月の睡眠の状態を「悪い」または「とても悪い」と答えた生徒も約1割おり、自覚的な不調が一定程度存在することが分かりました。
講演と体験活動
心の不調に早く気づくことの大切さや、ストレスが体調や睡眠に与える影響について具体的な説明がありました。講演の間にミニ体験活動として、事前ワークで取り組んだ自身の睡眠記録を自分の睡眠を振り返る時間やリラクゼーション法(呼吸法)を体験する時間も設けました。
・睡眠には「ノンレム睡眠(深い眠り)」と「レム睡眠(浅い眠り)」があり、一般的にノンレム睡眠が約75%、レム睡眠が約25%の割合で構成されるとされています。ノンレム睡眠は身体の回復や成長に関わります。レム睡眠は脳の活動が活発になる一方で、夢を見ることが多く、精神の整理や熟睡感に重要な役割を果たします。
・スマートフォンやパソコンのブルーライトは、睡眠ホルモン「メラトニン」を抑制するため、入眠を妨げます。日中に適度な日光を浴び、夜は光を避ける生活リズムが大切です。また、寝る前に布団の中で長時間スマホを使用することは避けましょう。
・長時間寝たからといって必ずしも熟睡感が得られるわけではありません。短時間でもレム睡眠とノンレム睡眠がバランスよく訪れることで、十分な熟睡感を得られることがあります。
・社会的時差ぼけとは、平日と休日の睡眠リズムのずれにより、体内時計と社会生活の時間がずれてしまう現象です。海外旅行の時差ぼけと同じように、体内時計のリズムが乱れることで、日中の眠気や集中力の低下、体調不良などを引き起こすことがあります。
・睡眠日誌を活用した睡眠改善の手順について
■ 睡眠時間の振り返り
①2週間分の睡眠日誌(就寝時刻と起床時刻と睡眠時間)をつける。
②平日と休日の一日の平均睡眠時間を算出し、睡眠時間の差を比較する。
例:平日7時間、休日9時間 → 差2時間。
③平日と休日の平均睡眠時間の就寝時刻と起床時刻から、睡眠の中心となる時刻(睡眠中央時刻)を求める。
例:就寝23時~起床6時 → 総睡眠7時間 → 睡眠中央時刻はAM2時30分。
■ 就寝時刻の段階的調整
①平日と休日の睡眠時間の差を抑える。
②平日と休日の睡眠時間の差が2時間以内になるように調整する。
③睡眠中央時刻を軸に就寝・起床時間を整える。
・ストレスは「だるさ」「集中しにくさ」「気分の落ち込み」「イライラ」など、さまざまなサインとしてあらわれます。これらは個人差があり、気づきにくいこともありますが、「何となく元気が出ない」「いつもより眠れない・寝すぎてしまう」といった小さな変化も心の疲れのサインとして捉えることが大切です。
・質の良い睡眠は体の疲労回復だけでなく、精神の安定や学習効率の向上にもつながります。夢を見ることやレム睡眠の体験も、熟睡感を得る上で重要であり、睡眠の個人差を理解しながら自分に合った睡眠習慣を身につけることが推奨されます。
・心を落ち着かせる具体的な方法(リラクゼーション法)について
これらは「眠れないときに役立つだけでなく、勉強前の集中力アップにもつながります。
■ 呼吸法:4秒かけて息を吸い、ゆっくり吐くことで体の緊張をほぐす方法。授業前や寝る前にも取り入れやすいです。
■マインドフルネス:過去や未来のことを考えすぎず、「今ここ」に意識を向ける練習です。雑念を減らすことで不安を和らげる効果があります。
■自律訓練法:手足の重さ・温かさに意識を向け、体と心をリラックスさせる方法。短時間でも集中力回復に役立ちます。
(呼吸法の体験前と体験後の違いについて感じたことを発表している様子↓)
・困ったときに話せる相手を持つことは、問題を解決するためだけでなく、心を軽くするきっかけにもなります。学校には相談窓口があり、話すだけで気持ちが整う場合もあります。小さな悩みこそ、早めに話してほしいです。
感想(生徒・教職員)
【生徒の声①】「自分の睡眠リズムを見直すきっかけに」
今回の保健委員の発表を通して、平日と休日の睡眠時間の差が大きいことに気づきました。休日に夜更かしをして朝寝坊することが、体内時計を乱し、社会的時差ぼけにつながるという話が印象に残りました。これからは、休日でも平日とあまり差が出ないように起きる時間をそろえ、朝の光を浴びるようにしたいと思います。少しずつでも生活リズムを整えて、すっきり目覚められる日を増やしたいです。
【生徒の声②】「睡眠の“質”を意識するようになった」
これまで「たくさん寝ればいい」と思っていましたが、睡眠の質」や「睡眠の安定」が大切だと知りました。特に、就寝・起床の中央値がずれていると疲れが取れにくいという話が印象的でした。夜はスマホを早めに手放し、寝る前にリラックスできるよう呼吸を整えたり、部屋の明かりを少し落としたりする工夫をしてみたいです。
【生徒の声③】「よい眠りは心の健康にもつながる」
眠ることは体を休めるだけでなく、気持ちを安定させるためにも大切だと学びました。眠れないときには、心の状態が影響している場合もあることを知り、自分の心のサインにも気づけるようになりたいと思いました。これからは、夜更かしせずに寝る時間を決めて、朝気持ちよくスタートできるような生活を心がけたいです。
【生徒の声④】「時間の使い方を“眠り”から考えるようになった」
これまで私は「寝る時間がもったいない」と思って、夜遅くまで動画を見たり、勉強をしたりしていました。でも、“社会的時差ぼけ”という言葉を知り、自分の生活がその状態に近いことに気づきました。休日に昼まで寝てしまうのは、実は体が疲れているサインだったのかもしれません。最近は、寝る時間を削るよりも、眠ることで次の日を充実させる方が効率的だと考えるようになりました。これからは、「睡眠も自分の時間の一部」として大切にしたいです。
【教職員の声①】「良い眠り”が心と体を整えることを実感して」
生徒の皆さんと一緒に睡眠記録をつけてみました。すると、平日と休日で睡眠中央時刻がほとんど変わっていないことに気づきました。以前は休日に10時や11時まで寝てしまうことがあり、たくさん寝たのにすっきりしないと感じていたのですが、最近は平日も休日も朝7時ごろに起きるようにしています。そのおかげか、睡眠時間が短めでも朝の目覚めがすっきりしていて、1日のスタートが軽やかになった気がします。今回の講演で「睡眠中央時刻が安定していること」が、心身のリズムを整える鍵だとわかり、とても納得できました。
また、講演では「睡眠時間の不足が日中の集中力や感情にも影響する」というお話もあり、睡眠と心のつながりを改めて実感しました。良い睡眠は、心を落ち着け、前向きな気持ちを保つためにも欠かせないものです。附属中の皆さんにも、ぜひ自分のリズムを整えながら、質のよい眠りを続けてほしいと思います。
生徒の生活習慣を整えたり、心の健康を保持増進したりするためには、学校だけでなく、家庭での見守りや声掛けが大変重要です。今回のこの記事をきっかけに、ご家庭でも会話のネタにしていただき、情報共有をしていただければ幸いです。今後も学校と保護者が連携し、生徒の健やかな成長を支えていけるよう、ご理解とご協力をお願いいたします。